コンセンサスアルゴリズムの比較メモ

元々Bitcoinで使われたいたProof of Work(PoW)は色々と問題があった。[^1]

  1. 専用のハードウェアが有利すぎるためマイナーの集中を招く
  2. アルトチェーンが普及すると、それらのマイニングパワーを一つのチェーンに一時的に集めることで容易に51%攻撃が行えるようになる。
  3. 手数料はマイニングノードが持っていくため、P2Pノードを立ち上げるモチベーションがない

この記事を書いた当初はこれらは大きな問題だと考えていたが、現在の意見は少し違う。 1は「集中化」の意味が3つあってややこしいのだが、a) 物理的な集中、は大きな問題ではない。b) マイニングする「主体」の集中は不可知なので議論の対象にならない。 3) 固定費用の増額は「マイニングが自由市場から遠ざかる」という意味で長い目で見れば問題である可能性が高い。 したがってBTCはコンソーシアムチェーンのような方式(PoSではない!)に移行する必要がある可能性があるが、現時点で考えるのは早い。 2は、アルトチェーンが潰される可能性のほうが遥かに高いので問題ない。 3は、取引所などはSPVクライアント以上の信頼性を確保する動機があるので問題ない。

実際のところ、PoWの「問題点」と言われているものはブロックの発行権が自由市場に有ることに伴う不可避な特徴なので、ビットコインが「マネーのプロトコル」である限り避けることは絶対にできず、 したがって改善すべきでない。という場合が多い。

Ethereumでは開発当初からこの点を改善すべく色々工夫している。

はじめはメモリ容量をたくさん使わざるを得ないようなPoWにして、GPUやASICによる採掘を避けようとしてきたが、 これは実装が面倒なのと、ハッシュパワーほどではないにしろ大量の電力と計算資源を無駄に消費する必要があるため、途中から採掘力が保持されているEtherの量に比例するような仕組みである*Proof of Stake*を使用するようになりつつある。

Proof of Stakeとは

Ethereumの場合

1秒間に1回のみハッシュ値を計算することができ、成功確率は自分の持っている残高の量に比例する。という決済方法

定式化すると

SHA256(prevhash + address + timestamp) <= 2^256 * balance /diff

を満たすときに採掘に成功する。

コンセンサスプロトコルは、全て投票による合意(consensus by bet)の特殊例とみなすことができる。

例えばPoWでは特定のチェーンに対してマイニングを行うことで、 p*R-E の利益を得ることが期待される。ただし

これはつまり、PoWは特定のチェーンに(ハッシュパワーを)「賭ける」ことに等しいということ。オッズ比はE:p*R-Eとなる。

こう考えるとそれぞれのコンセンサスプロトコルは

  1. 賭けに参加できるのは誰か
  2. 金額及びオッズ比

違いしかないと言える。

-> 訂正: 実を言うと、PoSに関してはvalidator(マイナー)になるリスクがほとんどないという重大な違いがある。 「賭け」ではないので、「常に経済圏全体で格差が広がっていく力が存在する」 という貨幣としては致命的な欠点が存在する。Casperは資産を一定期間ロックする事による 「機会費用の損失」をリスクと考えるが、これはより多くの資産を持つ者に有利であるという点でこの問題を本質的には解決していない。

PoWはブロックの作成とハッシュパワーによる賭けが同時に行われていたのに対し、 PoSではブロックの作成が気軽に行えるので、どんどんブロックを作ってしまって、あとからStake Holderによる賭けで決めてしまえばよいという発想を採用している。

ただ、もちろんこれはネットワーク帯域の消費量が大きいという欠点があるので、 Shardingを導入することが重要になってくる。 これは全ノードが全トランザクションを検証するのではなく、一部のノードだけが検証することでスケーラビリティを担保する方法

問題点

  1. 二重投票が容易(どころか最適戦略)
  2. マイナーの硬直化
  3. genesis block時のトークン保持者がいつでも51% attackを行える

問題点はフォークが発生した際にその両方でマイニングすること(二重投票)が、功利主義的には最適な戦略であることにある。

言い換えるとフォークを収束させるメリットがマイナーにない。

PoWが優れているのは、投票にあたって「コスト(ハッシュパワー、すなわち電力)」を消費しなくてはならない(つまり「気軽に」マイニング(= 投票)を行うことができない)ことが保証されていることにある。

Ethereumでは懲罰的アルゴリズムを導入することで対処している。

もう一点がマイナーの硬直化に繋がる可能性があること。 PoSはマタイの法則で一箇所にETHが集まってしまい、貯蔵を促進する傾向がある。

これは使用すること自体に積極的なインセンティブを与えることが良い対処法となる。

Slasher

Proof of Stakeにおいて二重投票を防ぐために導入されたプロトコル

Slasher 1.0

マイニングに参加するにあたってデポジットを登録しておき、2重投票が見つかったら没収されるというもの。

シンプルだが(Vitalik曰く)有効

マイニングに成功しても、報酬が即座に払われず1000ブロック後に払われるように記憶される。 その間に2重投票をしているのが見つかった場合、セキュリティデポジットが没収されるため、マイナーはbonded validatorと呼ばれる。

Slasher 2.0

二重投票ではなく、「間違った」フォークに投票した場合に没収される。

これにより、確率的二重投票が最適戦略になる可能性が低くなる。(らしい、よくわからん。)

(ユーザーにはセキュリティデポジットを回収する権利を認めなくてはならないため)短い分岐に対してしか有効でないという点は1.0と同じ。

もしセキュリティデポジットの回収を不可能にすると、(トークンの価値が上昇し続けない限り)マイナーの固定化につながる可能性が高い

GHOST

で、Ethereumとは独立に、PoWに決済時間の短縮という目的でGHOSTというプロトコルも2013年に提唱されていた

詳しくは論文を読んでもらうとして、要点だけを述べるとこれは割とシンプルな仕組みで、複数のフォークから一つを選ぶ際にそのフォーク中の一つだけ分岐したブロック(stale block)を考慮に入れるというもの。

例えば以下のようなブロックの分岐があった際に


○--○--○--○--○--○--○--○ <- A
    \
     \
      ○--○--○--○--○ <- B
          \  \
           ○  ○ <- C

ビットコインでは単に最長のものを選ぶのでAが選ばれるが、GHOSTを用いた場合はBが選ばれる。

決済時間を短くすると、このような分岐が増えるので有効な仕組み。Bのほうがより多くのPoWを(すなわち「得票」を)持っているということが直感的説明。

Modified GHOST

EthereumではこのGHOSTに若干の修正を加えている。

  1. 選ばれたブロックの「おじ」(uncle, 図中の C )のマイナーにも若干のマイニング料を与える。(トランザクション手数料は無し)
  2. おじは、7世代前までのみを考慮する。(効率性のため)

など

CASPER

「上で説明したGhostとSlasherをいい感じに組み合わせたもの」くらいの理解をしている。

Casperは集中化を招くという指摘があり、The DAO事件とあいまってEthereumコミュニティの閉鎖性に対する批判のやり玉となっている。

Delegated Proof of Stake (DPOS)

BitSharesやLiskで用いられている。

こちらのまとめが詳しい。

Tendermint PBFT

オリジナルのPBFTがSticky leader systemならば、こちらはラウンドロビンっぽいやり方でリーダー(承認者)を決める。 これにより承認者がダイナミックに変更できる。

PBFTのようにファイナリティを持たせつつ、CasperのようにStakeに基づく民主制と、メンバーの変更可能性をもたせたいというモチベーションから作られたっぽい。

BitTorrent/LibSwiftにインスパイアされたアルゴリズムを用いている(…らしいが、どこをどうインスパイアされたのかよくわからない。)

Proof of Excelence

コンピューティングパワーを投票に使用するという点ではPoWと同じだが、コンピューティング資源を無駄にしないように、「人類にとって有用な問題」を解かせようというアイディア

有用な問題には例えば数学の定理や何らかの関数の最大化などがあり、前者はProof of Proof、 後者はProof of Optimizationと呼ばれる。

アイディアとしては面白いがかなりの変化球であることは間違いない。Difficultyを固定できないとまずいのではという気はする。

Proof of bandwidth, storage, identity

不明

Proof of Importance

EthereumではなくNEMでは、Proof of Importance(PoI)というコンセンサスアルゴリズムを用いる

元々はTransaction as Proof of Stake(TaPos)と呼ばれていた。 Slasherでは対処できない長期的なフォークに対して、アカウントが関与した「トランザクションの量」をマイニングパワーとすることで対処する。

ナイーブに実装すると、仲間同士で無意味にやり取りをすることでマイニングパワーを不当に上げる事ができる。 よって「経済圏全体で」どれぐらいの存在感があるのかを定量化する必要があるため、小さな「島」と作っているアカウント群を低く評価しなくてはならない。

トランザクションの履歴は有向非巡回グラフになるので、GoogleのPageRankに似たNCDawareRankというアルゴリズムでランクを付ける。 PageRankは、Webのグラフをマルコフ連鎖とみなして、その確率遷移行列を分解することでランクを付けるが、グラフ中に「島」となるクラスタがあると分解が難しくなる(Nearly Completely Decomposable, NCD)ため、NCDawareRankを用いる。

PoIの利点

1. PoSの「富めるものがますます富む」という問題がかなり弱まっている。

Ethereumはインサイダーが信用できないという大きな問題があり、正直この点がアキレス腱になっていると思うので、これは大きい。

2017/02/26更新

実際には

  1. 「同じインカムとアウトカムがある場合、コインをより多く保有している方が有利」
  2. 流動性を「浪費」したものではなく「行使」したものにrewardが与えられる(Casperと真逆の発想)

であることから、上記の問題は全く解決されていないのではないかと思っている。

2. 監査証跡が可能

Fungibilityがないことと表裏一体、後述

PoIの欠点

1. Fungibilityが手に入らない。

トランザクショングラフを書く必要があるので、原理上Fungibilityを担保することは無理(多分)

2. Spammingに対する耐性が完全ではない。

上限があるとはいえ、トランザクションを繰り返すことで多少Importanceを挙げることができる。

この点、改良の余地はあるのか、グラフ理論の専門家の意見が気になる。

(追記): 他のコンセンサスアルゴリズム

Proof of Activity Proof of Human-work

参考

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